WordCamp Tokyo 2023 参加レポート・振り返り

だいぶ時間が経ってしまいましたが、去る10/21に参加した WordCamp Tokyo 2023 の参加レポート・振り返りを書き留めておきたいと思います。

まず、運営に携わった方々や登壇された方、スポンサーの方々、お話してくださった方々、本当にありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

概略・自分の全体の動き

仕事環境の変化等もあって体調的にやや厳しい状態でしたが、何せ新型コロナウイルス流行以降初めて、実に4年振りのオフライン開催とあっては多少の無理はあっても参加したい、と考えておりました。

前日の仕事の具合や当日の体調を鑑みて、11時前後に現地到着を目指す比較的スロースタートでの動きを取ることにしました。

今回は場所が有明で、自分にとっては公共交通機関的に行き慣れた場所という地の利もあったのですが、それが逆に徒となって建物を勘違いして11時に間に合わず最初のセッションを棒に振るという結果になってしまったわけですが……。

WordCamp Tokyo 2023 会場
WordCamp Tokyo 2023 会場

その代わり、11:00~12:15のセッション時間をめいっぱい使って比較的人の少ないスポンサーブースを回って情報収集して、混む前に早めにお昼もいただいて(野菜カレー美味しかったです)、午後のセッションから本格的に臨むことにしました。

WordCamp Tokyo 2023 会場内のパネル
WordCamp Tokyo 2023 会場内のパネル

夕方も午前中に立ち寄れなかったスポンサーブースを回って情報収集を続け、最後にアフターパーティに参加して帰途に就きました。

セッション

聞いたセッションについて所感も含めてまとめます。

環境変化の激しい WordPress のメンテナンスをどう考えるか

  • 時間
    • 13:30~14:45
  • 登壇者
    • スピーカー・パネリスト: 遠藤 進悟様
    • パネリスト: 川井 昌彦様、小島 健司様
    • ファシリテーター: コスギサヤカ様

セッション

※セッションの詳細は公開されているスライド資料を参照

  1. WordPress の動作環境を知る
    • LAMP
      • Aapche, NginX
      • MySQL, MariaDB (SQLite)
      • PHP
    • 推奨環境
      • WP6.3
        • PHP 8.1, 8.2
          • 5系はついにNGになった
        • MySQL 8.0
    • WP6.3
      • 60%くらい使用されている
      • 以前のバージョンも結構多い
    • サイトヘルスで状態を確認しよう
  2. WordPress に関するアップデートを知る
    • アップデートの仕組み
      • なぜアップデートするか
        • 利用者が利用しやすくする
          • 将来実装したい機能への布石
        • 多くの人がカスタマイズしているような部分を使いやすく
        • 表示速度向上
        • セキュリティ
          • これが一番重要
  3. WordPress のメンテナンスを知る
    • 本体・テーマ・プラグインのアップデートを行う
    • 情報収集する
    • 不具合が起こった際の状況把握する
    • コードのメンテナンス
    • 何も起こらずに安定運用できることが重要
      • Webサイトの運用が滞りなく安全に行われること
      • 変化させないということではない
        • 環境の変化は必須。変化させない、というのは正常の在り方から外れている。

パネリストディスカッション

  • 自分が作り始めて数年目のものが一番大変
    • やり方や作法が分からず、検索したコードをコピペして意図した挙動になっていればOK、というのは初心者がやりがち
    • 他社制作のサイトは大変。
    • 技術的に作り方や考え方が異なるのもそうだが、テーマやプラグインが有償でライセンス上の制約があったりすると技術以外の部分でも苦労する。

この部分は自分も非常に思い当たる節があるので首を縦に振ることしかできませんでした。会場の皆様も「分かる分かる」という感じに見受けられました。

  • カスタムフィールドについて
    • Toolset Types の有償化
      • 他のプラグインや自前実装への切り替えを余儀なくされる
      • 特にカスタムフィールドの繰り返しの場合、 Smart Custom Fields はメンテしない方針なので選択肢はほぼ一択しかない

この件も当時かなり激震でしたね……便利なプラグインだったが故に余計に。

  • 技術以外にも注意すべき点
    • PHP コードのプラグインならばまだしも、 JavaScript ライブラリのライセンスやフォントのライセンスも注意

盲点になりがちなのでこれは自戒すべきだと感じました。

  • 自作のテーマは信頼できるテーマに置き換える、例えば Lightning 等
    • 古いサイトはリニューアルで乗り切る
      • PHP 7 → 8 は Warning が大量に出る
  • 保守しやすいサイトとは?
    • 自分でコードを書かない
    • 信頼できるテーマやプラグインを使ってカスタマイズ
      • プラグインとして切り出す
        • Lightning, Swell, Snow Monkey 等はよくできているが、もしカスタマイズしようと思うと複雑
          • 用意されている hook を使うことでカスタマイズはできる

かつては自作が良い、というメジャーストリームでしたが、その時代は変わったのだということを感じさせるパネルディスカッションの一コマ、一つのエポックのように感じられました。

  • 5ページくらいなら静的サイトでも良いのではないか
    • Wix や Studio といったSaaSの選択択もある
      • 今日び、凝ったデザインそこまで必要だろうか?今はコンテンツ中身重視の風向きのため

レスポンシブ前提のグリッドレイアウトがベースでフリーレイアウトは難しいですし、スマートフォン前提にすると凝ったデザインではかえて見づらくなってしまう、という技術面もさることながら、情報の信頼性等を考えると本当に中身のコンテンツが重要になる、というのも非常に頷ける話です。

これらも含めて全面的に肯定なりあるある、という同意が主な所感でした。

これからの WordPress テーマとの付き合い方

  • 時間
    • 15:00~16:15
  • 登壇者
    • スピーカー・パネリスト: 久野 晃司様
    • パネリスト: キタジマ タカシ様、タカミ アラタ様
    • ファシリテーター: 齋木 弘樹様

セッション

※セッションの詳細は公開されているスライド資料を参照

  1. テーマとは
  2. テーマの種類
  3. テーマそれぞれの特徴
    • 5.9からFSEが入ってきた=ブロックテーマ
      • ブロックテーマ
        • ユニバーサルテーマ
          • カスタマイザーやメニューを利用できるようにしたブロックテーマ
          • 5.9では情報が出てきたが最近は見ない
      • クラシックテーマ
        • ハイブリッドテーマ
          • theme.jsonがある
  4. 今後のテーマの進化
    • ブロックテーマへ変わっていく
    • ただし即座にクラシックテーマがなくなるわけではないし、完全に置き換わるかというとそうでもないのではないか。

パネルディスカッション

  • クラシックテーマかブロックテーマか
    • 運用に依る。サイト運営者がどのくらいの操作ができるか。ブロックテーマはできることが多い。
    • 小さいプロジェクトならブロックテーマ(知識・技術があるならば)。大きなプロジェクトはハイブリッドテーマ。

今後ブロックテーマとどのように付き合っていくか。まだブロックテーマが世に出て日が浅いので手探りな状態、というのが正直なところではないでしょうか、という話。

今後のノウハウの蓄積に期待、でしょうか。

  • 直近ブロックテーマ初挑戦した事例
    • 課題: レイアウトも DB に入るので Git 管理(コードベースの差分管理)をどうしようか?
    • 大規模でエンタープライズでキャッシュや CDN をどうするか、という課題もある

ブロックテーマの課題。確かに、誰でもレイアウトやタイポグラフィの変更が容易になって、よりライトユーザ(それこそカフェのオーナーのような)が自分が望むサイトを作りやすくはなっていると思います。

一方でこの場で上がった課題のように、制作者サイドで言うと管理が難しくなった、というのもそう感じる部分はありますね。これも今後解決策を界隈で探っていくことになるのかな、と感じました。

  • 6.4で入るデフォルトテーマの Twenty Twenty-Four は良い意味で普通っぽい
    • これまでのデフォルトテーマでありがちだった英語圏の大きな文字の見出し、明らかに日本語だと大きい、というのが少なさそう

あるあるですね。

  • ブロックテーマとクラシックテーマのどちらを選ぶポイント。
    • ブロックテーマは基本レイアウトも含めてデータがDBに入る。DBへの負荷がクラシックテーマに比べて高くなりがちなのでキャッシュ(CDNなど)を効かせたい。が、キャッシュ効かせすぎると大変。チケットの残り枚数とか。その辺りのチューニングなどをどうするか。

これも課題に通じる内容ですね。今すぐ銀の弾丸のような解決策が出てくるのは難しそうですが、いずれ出てくることを信じたいですね。

スポンサーブース

以下、スポンサーブースでの情報収集についてのメモ。

  • FONTPLUS の新形態
    • 興味深い技術実装でした。技術的な説明を聞いて確かにそれならば早い、と感じました
  • SWELL の方
    • 新しいCSSフレームワーク・コンポーネントライブラリを開発中
    • Next, Astroでも使えることを構想
      • やはり静的サイトでは Next や Astro が注目ですね
  • QA Analytics
    • AIにコンバーション変化のアタリを付けさせてアドバイスする構想
      • アクセス解析は個人的に弱いのでこういうサポートがあると助かるなぁ、と思いました。
  • WP Toolkit
    • AIが本体やテーマ、プラグインのアップデートをして不具合を起こさないかかを判断する
      • 個人的に、今はこれを判断できる人員が限られているので属人化を起こしているのでこういうことを実現できるとハッピーになれると感じました。
      • 先ほどのプラグインといい、やはりWeb開発でもAIが進出していますね……そういう意味でもトレンドと言いますか時代を感じました。
  • Privacy Sandbox
    • Cookie だけでなく、個人情報と捉えられるもの(日本だけではない。例えば、 GDPR 等)の取得を止めよう、という動き
    • User Agent 文字列も Google Chrome を初めとするブラウザで廃止予定。 Chrome は来年予定の模様。PCサイトとスマホサイトの切り分けをしている、というような使い方をしているサイトも例えば UA-CH への転換が必要。

「ああ、こういうものがあると助かるな」というものや、「面白そう」というものもあれば、もっと「取りかからなければ」といような喫緊のものまで諸々情報収集をすることができました。

やはりこういう鮮度の高い情報をダイレクトに収集できるのも、オフラインのイベントの醍醐味といいますか、ならではのメリットだな、と感じました。

オンラインだとどうしてもセッションメインになってしまうので、双方向の情報のやりとりや雑談的なところからの意外な発見や発展というのが難しい、と感じていたので。


以上、簡単ですがまとめとさせていただきます。

この記事を書いた人

アルム=バンド

フロントエンド・バックエンド・サーバエンジニア。LAMPやNodeからWP、Gulpを使ってejs,Scss,JSのコーディングまで一通り。たまにRasPiで遊んだり、趣味で開発したり。